デジタルアース(俯瞰型情報基盤)による「知の統合」の研究拠点の形成

採択年月: 2012.04

概要

文部科学省 私立大学戦略的研究基盤形成支援事業部
緊急対応が求められるエマージングクライシスに対応するためには、自然環境情報や人文社会情報を時間と空間を軸に様々な情報をリアルタイムに収集・照会・閲覧・分析して、過去から現在までに地球上で起きてきたこと、そして今後起きる可能性のある出来事を予測、俯瞰し、総合的な議論をするプラットフォーム(デジタルアース)が求められています。 当センターではデジタルアースの構築を通し地球の危機管理システムの構築を目指します。

資料1


目的

地球温暖化やエネルギー問題、複合広域災害など、人類社会の発展にともなって生起した問題は、複数の学術分野を横断する「問題複合体」である。また常に不確実性や意思決定に関する多様な利害関係が存在するため、専門知の統合だけではなく市民による集合知を含めた「知の統合」が必要不可欠である。そのため関連する現象の様々なデータを統合し、地域から地球まで問題の全体像を俯瞰的に捉え、適切な対応策を解析・検討するデジタルアース(俯瞰型情報基盤)の開発と、それを問題複合体に応用・運用し合意形成を支援する仕組み(制度設計)が求められる。本研究プロジェクトではその実現のため、日常時のリスクコミュニケーションから緊急時の危機管理支援までを事例に、「知の統合」と「意思決定」手法の提案や実験を行う研究拠点を形成し、その支援システムの社会的な実装および技術移転を最終目的とする。


研究分野

主たる研究分野としては以下の分野となる。

知の統合のためのナレッジサイエンス リスクアナリシス 広域自然災害(東海地方における5連動地震)
GIS(地理情報システム) 不確実性の可視化
デジタルアース センサーWEB 全球的な気候変動(地球温暖化)
メタバースの統合 GPU並列計算によるシミュレーション 市民参加型図上演習、ゲーミングシミュレーション
多次元情報の表示 メタデータ情報の自動収集・解析
空間相関解析 オントロジーの構築と利用 意思決定支援システム

研究組織

以下に平成25年3月時点における構成員および役割分担を示す。

所属・職 研究者名 研究課題 役割分担
中部高等学術研究所・所長 福井 弘道 GISと多次元表示方法の開発・制度設計 俯瞰型情報基盤の構築・研究統括
国際GISセンター・教授 本多 潔 GPUシミュレーションとセンサーネットワーク開発 情報基盤データベースシステム構築
国際GISセンター・准教授 竹島 喜芳 自然環境変化と人間社会の相互影響調査 情報基盤の具体的な事例への適用
国際ESDセンター・准教授 古澤 礼太 メディア・SNS情報の利用解析 情報基盤へのデータの収集
国際ESDセンター・講師 岡本 肇 市民参加・合意形成手法の開発 情報基盤運用システムの作成
工学部・准教授 井筒 潤 地震などの広域自然災害リスク及び防災 情報基盤の具体的な事例への適用
人文学部・准教授 渡部 展也 不確実性の表現形式の開発 情報基盤運用システムの作成

研究内容

本研究の目的は具体的な事例を通じて、実利用に耐えるデジタルアース(俯瞰型情報基盤)を構築することにある。そこで、全年度を通して具体的な事例として人々の関心の高い(構築されたシステムの社会的貢献度の高い)2つのテーマを取り上げる。
① 東海地方における5連動地震の減災
② 地球温暖化の緩和・適応
である。構築すべきポイントとなるのは、データ・システムに加え、世の中に存在する様々な知識・叡智を、中部大学のデジタルアースサーバーに持続的に蓄積されていく仕組み、不確実な事象をどのように可視化し合意形成を支援するかを体系化することにある。具体的事例を通した複数回の図上演習を通してPDCAサイクルを実施し、情報基盤として整備するデータ・システムを修正・改善しながら完成させる。
まず「5連動地震」や「地球温暖化」を議論する上で必要と一般的に考えられるデータ・知識を整理・収集し、現在中部大学で保有するデジタルアースサーバーに実装し、図上演習を通じて結果をシステムにフィードバックし更なる改善を経て、相互運用システムの構築、俯瞰型情報基盤の構築と運用を行う。合意形成を行なっていく上で新たに提案、開発すべき研究課題(論点抽出・合意形成のシナリオ/不確実性の可視化/主題図の多次元表示と空間相関解析/ニアリアルタイムシミュレーション)の検討を平行して実施し、システムの仕様を明らかにして実装を行う。
最終的には「デジタルアース(俯瞰型情報基盤)」、「相互運用システム」、「知の再編・融合・創造」、「合意形成のシナリオ」、「不確実性の可視化」、「主題の多次元表示と空間相関解析」「ニアリアルタイムシミュレーション」の7つの観点からのまとめを行い「知の統合」のための情報基盤整備を完成させる。また、「知の統合」のための情報基盤としてシステムのパッケージ化を行い、様々なテーマでこのような「知の統合」が行えるよう、マニュアル・事例を編集し国内外への技術移転を図る。


期待される効果

研究により、専門家間や、専門家と意思決定にかかわる市民との間で情報の共有が進み、不確実性や利害関係に関する議論が促進され、「知の統合」・「合意形成」が実現することで、社会的要請の高い問題複合体に対し、解決策を見出すプラットフォームが構築されるとともに、新しい知の創造が期待される。
具体的には図上演習・社会実証実験を通じて
① 気候変動に対する共通認識を醸成し、持続可能な地球社会の形成が支援される
② 地震災害や風水害のリスクの高い東海地域を対象に、平常時および発災時の公助、互助、自助に有効な業務・サービスシステムが提供される
などが成果となる。各年度ごとに到達目標を設定しており進捗状況をはかり成果を社会へと公表する(様式III-2参照)。最終的には地域社会を構成する多様な主体が協働で社会的な意思決定を行い、持続的なリスクの削減、逓減と減災が可能な「リスク対応型社国際社会、持続可能な社会」を構築するため、社会システムパッケージとして集成し、国内外へのシステムの技術移転、国際貢献に寄与できる。


外部評価委員会

所属・職 氏名
関西大学環境都市工学部・教授 盛岡 通
立命館大学文学部地理学教室・教授 矢野 桂司
東京大学空間情報科学研究センター・教授 柴崎 亮介
名古屋大学大学院環境学研究科・教授 林 良嗣
アジア工学大学院・GICディレクター・教授 Lal Samarakoon

研究業績

本事業における、平成24年度からの研究業績は下記からご覧ください。